雑記

800kmを乗り越えて

「プラマドンナ」考察①朝倉について

※自己解釈・ネタバレ満載のため注意※

2006年 お座敷コブラ 4畳目公演「プラマドンナ」

 

 【朝倉についての考察】

個人的に朝倉さんとクロードルさんについては語りたいことが多過ぎて、台詞を全部書き起こしたメモを見ながらこれを書いています。


■「私もあなたも、正直者というわけにはいきませんからね」から考える朝倉の嘘

[1]ウィスタリアがランナーから外れた理由

事件の日、朝倉の台詞
「逃げてください、初号機が……ランナーから勝手に!」
クロードルが朝倉に問い掛ける台詞
「だったらなぜ、奴をランナーから外した?」

朝倉はタミヤ博士に対してウィスタリアが自ら逃げたと嘘をついた。
恐らく、朝倉が事件を起こしたきっかけであることを知っているのはクロードルだけ。

朝倉はウィスタリアをランナーから外した理由を彼と対話したかったからだと語っている。
なぜこの日、朝倉がそれを実行したのか。

(仮定)
13研究所が無くなると決まった時、ウィスタリアは欠陥品として処分されることになったから?
※もしくは、プラーナモデルは3体とも処分されるはずだった?
→戦争を放棄するとはいえ、国が兵器を野放しにするとは考えにくいため。

朝倉にとってウィスタリアは深い興味の対象であり、自分が何なのか疑問を抱く姿を見て同情を覚えたのかもしれない。もしかしたら、独りきりの彼と戦争で死に損なった自分を重ねたのかも。そして元が人間ならば分かり合えると信じた。

「私も知りたかったんです。彼のことが。彼と話がしたかった」
朝倉はそんな自分の行動を今も後悔し続けている。何度も命を絶とうと苦しむほどに。

「私は忘れたことなどなかったよ」
「殺してくれたほうが楽だったよ……!」
ハルミチとアキと触れ合って過ごした時間は彼を確かに救っていたと信じたかった。それでもウィスタリアに対して絞り出したこの言葉は、今も傷が癒えていないことを表しているようで悲しいなと思う。


[2]研究所の職員としての"朝倉博士"

クロードルの台詞
「私は別に裏切られたなどとは思ってない。あそこの研究所の人間たちも、お前のことを信じきっていたんだろ?」
「お前はうちの社員だ。あそこの職員じゃない」

「信じきっていた」という表現を使うのは騙していたということ。
研究所職員としての"朝倉博士"は、何らかの理由でクロードルが送り込んだスパイのようなものと思われる。
目的はなんだったのか。更なる兵器開発の技術を国から盗むため?ウィスタリア含むプラーナモデルを監視するため?
しかし研究所でのプラムとデルタとの関わりの中で、彼らを単なる兵器としては見られなくなった。プラムとデルタが解放されるなら、繋がれたままのウィスタリアのことも助けたかった。

結果としてタミヤ夫妻を騙したまま、二人が死ぬ原因を作ったことを懺悔しながら生きている。

アキに向けた台詞
「隠し事はするなと教えたはずですよ。でも、ゆっくりでいい。太陽はもう少しだけ待ってくれそうだから」

この台詞、初見のときは綺麗な言葉だなと思って見てた。でも朝倉の秘密を知ってから聞くと、隠し事だらけの彼の胸は常に痛んでいたのだろうなと。
自分のようになって欲しくないからそう教えていた。ハルミチとアキを育てることが彼にとっての贖罪だったのかもしれない。

物語が終わる直前のシーンで、朝倉が首にかけていた十字架を外す姿がちらりと映った。
彼にとってそれがどういう意味を持つのかは分からないけれど、これからの彼が自分の幸せを願えるようになれたらいいなと心から思う。


■クロードルとの関わり

戦争の頃からの付き合いで、最低でも25年以上。
部下としてクロードルの背中を見続けてきた朝倉だからこそ、彼の暴走を止めたかった。
戦争の最中も、平和維持軍の兵士提供の話が出た時も、クロードルの意志は固かった。仲間を大切にする彼についていきたいと、戦争が終わっても彼のもとで働いた。

「あなたがあの戦争で生き残ったのは、あなたが部下に慕われていたからです」
クロードルに目を覚ましてほしい。仲間を想う気持ちを失わないでほしい。死んでいった仲間達はそれを望んでいないから。
朝倉はそんな思いでクロードルを説得していたのかな。

「目の前を見てください。多くの国民が、あなたが守ろうとした人々がこんなにも傷ついているのに!」
朝倉の悲痛な叫びに対して、もう手遅れだと言うように笑うクロードル。二人とも見ていて辛かった。
結局、朝倉の願いは叶わなかった訳で。
彼の人生にまたひとつ後悔が増えたのかな、と胸が痛む結末でした。


クロードルについてはまた別の記事で長々と語る予定なのでこの辺りで。